2021年5月「変わらぬ景色と新しい風」


 

「みき先生、診察室の窓からの原稿を…」事務局からの連絡。すっかり忘れていた。これはまずい。すぐに書かなきゃ。でも何を書こう。とりあえず窓から外を眺めてみる。曇り。それ以外に目新しいものはない。あ、どこかの洗濯物が風で飛ばされて向かいの駐車場の屋根の上に。そういやずっとあそこに引っかかっている。きっと持ち主も気づいていない。

 

最近、当院では診療時間中は常に窓を全開にしている。雨が降ろうと風が吹こうと。暑かろうと寒かろうと。黄砂が舞い込もうと虫が訪ねてこようと。思えば開業以来、診療中に窓を開けることなど一度もなかった。よほどのことがない限りブラインドすら開けていなかったように思う。うちのような小さな医院においてもこれまでの習慣は大きく変化した。

 

生活においてはあれだけ外食を好んでいたのにほぼ自炊。だからといって健康的になったわけではない。ついつい作り過ぎて食べ過ぎてしまう。その結果コロナ禍において10kg増量。これはまずい。運動しなければ。しかしコロナ以前にあんなに積極的に参加していたバレーボールも活動自体自粛中である。対策としてリングフィットアドベンチャーとかシックスパッドなど試してみたが、しっかり有酸素運動するような効果はなかなか得られない。だからといってジョギングは苦手である。精神面での変化は全くない。

 

変わっていくのは習慣だけではない。ウイルスも変化していく。イギリス型、インド型…。最近メディアでは東京五輪が変異ウイルスの祭典になるとか東京五輪型の変異ウイルスが発生するなど報道されている。いい加減な予想は良くないが、起こりうるリスクは想定しておかなければならない。しっかりした水際対策をお願いしたいと思う。

 

「窓から涼やかな風が吹いてきてとても気持ちいいわ」

 

ふと、始めて来院した患者さんが言った。窓の外を見上げると先ほどまでの曇り空に光が射している。どうやら悪い変化ばかりではなさそうだ。

高松市 三木武寛