2021年11月「私事で恐縮ですが」


 

 65歳を過ぎてそろそろこれまでの医師人生のまとめと後継者への交代を計画しなければと考えたのもつかの間の夢でした。

 

あれから2年が経過して青年医師の時代に戻ったかのような毎日です。午前は外来患者の診察、午後は訪問診療に地域を回り、帰院は19時になることも。帰宅後は携帯電話を枕元に置き、コールがあれば時間外休日も患者宅に出動します。そうです。在宅医療に注力した結果が私を青年医師のように忙しくしているのです。この忙しさを苦痛と感じるより充実感に満たされているというとまたワーカーホリックと言われそうですね。

 

高齢の寝たきりの患者さんやがんの終末期の患者さんを月に何人も天国に見送ります。ご家族と患者さんを看取るとき、青年医師の時のように病気との闘いに敗れ、悔し涙を流すことはありません。病気を治すと言うより在宅での療養環境を整え、安心を与え、患者と家族の関係にも配慮しながらサポート役に徹します。病状変化、家族関係、経済的困窮、在宅チームの連携など毎日様々な困難に見舞われますがそれもまた楽しみです。急な病状の変化の時には元気になったらまた帰っておいでと適切な病院に紹介状を持たせます。もう病院には行かない、最後まで自宅で療養したいという患者さんの要望には応えようと在宅チームで情報を共有します。診療所の看護師を始め事務スタッフ、訪問看護、ヘルパー、リハビリ、ケアマネなどの在宅チームが老医師を支えてくれています。以上、定年後の私がまだ頑張れる理由が少しはお分かりいただけたでしょうか。

 

国立社会保障・人口問題研究所によれば2040年まで日本の年間死亡数は増加し続け、2020年に比較して年間30万人以上増加、在宅医療を希望する患者はこれからさらに増加し、2025年には130万人の需要が見込まれるとのこと。

 

2025年には私は71歳、2040年には86歳です。まだまだ頑張る覚悟ですがコロナが落ち着いたら在宅医療に興味を持つ医師歯科医師を増やすために残りの医師人生を捧げたいと考えています。

                            

 

 

三木町 田中眞治