2022年5月号「梅雨空」


 

 

 診察室の窓の窓から見える空も雨模様の日が多くなりました。

 

もう梅雨の季節に入ったようです。以前から梅の花の季節でもないのにこの時期の長雨を「梅の雨」と書くのが疑問でした。先日、梅雨という字は中国から伝わったときは黴菌の雨、「黴雨」であったのが同じ音の梅雨となったのだと知りました。確かにこの時期はカビや雑菌が繁殖しやすくなります。ただでさえ、うっとうしいこの時期なので「黴雨」より「梅雨」のほうがまだ風情がありそうです。

 

しかし、香川ではこの梅雨と台風の雨が生活の上でなくてはならないものです。今でも平成6年の大渇水のことが思い出されます。

 この年は6月に入っても空梅雨で、そのまま四国地方は梅雨明けしてしまったのでした。このため、7月8日に仁尾町の夜間断水を皮切りに、高松市でも7月15日から午後4時から9時までの5時間給水になってしまいました。その後、台風7号の消滅後、猛暑に見舞われ早明浦ダムの貯水量が8月19日に干上がってしまいました。テレビでもダムの底から姿を見せた役場建物や、ひび割れた湖底が連日画面からみえました。高松の断水は9月30日までの67日間、給水制限は11月14日に解除されるまで139日間に及んだのです。

 

当院でも、患者さんのうがい用にミネラルウォーターのペットボトルの水を用意して対応しました。なにより、滅菌前の器具の洗浄が大変でした。

診療だけで無く、もちろん我が家でも生活水にも困っていました。近所から通ってくるスタッフに「あなたの家でも水道水がでなくて,大変でしょう。」と聞いたら、「いえ、うちは昔からの井戸があるので、それほど困ってませんね。」との答えでした。地元の人の生活の知恵になるほどと感心して、その後、外回り用にスタッフ用駐車場に井戸を堀りました。  

 

いつも、この時期は毎日、新聞でのコロナウイルス感染症の記事と早明浦ダムの貯水量に目を通すのが日課になっています。

 

                                         高松市 小野 耕資